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金城哲夫アーカイブ

飯島 敏宏

プロフィール

脚本家、演出家、映画監督。「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」等で監督や脚本を務めた。


発言内容

―初めて会ったときの印象は?
 

当時は沖縄って遠かったんですよ。まだ復帰前だったから。で、沖縄から帽子被った朗らかそうな青年がきてたんです。

で、僕は夜中に「月曜日の男」の脚本(ほん)を書いてると隣へ金ちゃんが座りこんで「マンデーマン」と言うんですよ、彼は。「月曜日の男」たしかにね。「マンデーマン、脚本書かせてくださいよ」とかね。そういう仲だったですよ。ですから初対面はね、かなり早い。

ほんとにね、その頃琉球、沖縄という印象でしょ。そこから来た、もう、笑顔が立派だし、こう丸いつば付きの帽子を必ず被っててね。太陽みたいな笑顔でね、来たんで。金ちゃんと言うと笑顔しか浮かばないですね。

 
―金城哲夫の脚本で好きな作品は?
嫌いなものはないですけどね。一番金ちゃんらしい本だなと思うのはね、題名は間違ってないだろうけど、題名がね「怪獣殿下」っていう。
それは「ゴメスを倒せ!」でも僕が書いた脚本でも、金ちゃんと打ち合わせしている中で、金ちゃんがいわゆるレティエというのかな、技法のひとつに パターンを組むことを覚えたなと思うのが、まず「少年が出る」みたいなことから、それがいわゆる説明書きになったりする。そういうこととか、怪獣の寄って来たるところね、怪獣がただ出てくるんではなくて、そこにテーマ性を持たせてね、やるみたいなことの。
それが一番、金城哲夫の色なものを書きましたけども、ウルトラセブンまでですけどね。沖縄をベースにしたと言われるウルトラセブンの中の傑作もあるんだけども、僕としては金城さんが金城哲夫というライターとして一番完成度の高い脚本を書いたのは、最初は「怪獣殿下」じゃないかなと思います。
 
 
―一緒に作った作品は?

ウルトラQの中で「2020年の挑戦」というのがありますでしょう。あれ金ちゃんと共同でね、色々。それがあの金星と火星の違いなんだけども、つまり53年前になるのかな。その脚本を書こうと。
その頃は、そこ自体が近未来だったんだけども、それから未来を考えた時に、まあ語呂も良かったんで2020年って設定したんですよ。
その頃の地球というのはね ちょうどウルトラQを撮ってる時は公害が目に見える公害だったの。今、中国の北京は公害が大変らしいんですけど、その頃は目に見える公害でね。それが「スモッグ」と言いだしたでしょ。「スモーク」と「フォグ」を混ぜて。
ですから、そういうことで2020年の地球は、もはや呼吸もできないだろうと、人間は。しかも文明が発達しすぎて、文化が遅れて、肉体はケムール人のああいう見苦しいというかな、なってると。ですから、あの53年前の地球に自分の肉体が欲しくて、人間の。拉致しにくるという。
で、それでケムール人というのはいいかげんで「金ちゃんこれどういうふうにしようか」「いや、煙のごとく消えるからケムール人だ」という、そういう金ちゃんは発想するんですよ。

これね、沖縄の人にとってはあれでしょうけど、金ちゃんが僕に、うちなーぐちの発音は「あいうえお」ではなくて、こうであると教えたように、僕ら日本のいわゆる江戸・東京弁はとてもダメですから、標準語をね、金ちゃんに色々。つまり、あの、脚本書いていくとちょっと日本語のおかしい部分がある。たとえば「お茶の子さいさい」なんて僕が書いたりすると「それはなんのことですか?」と金ちゃんが言うぐらいね。やっぱり江戸前のね、江戸時代から繋がってきたりしてる東京弁は苦手だったんですよ。だからお互いにこうね。

ですから「ニライカナイ」なんていう言葉は金ちゃんから聞かなかったら全然わからなかった。
金ちゃんの頭の中に、なんとなくニライカナイのイメージがあると。「金ちゃん ニライカナイってなんだい?」って聞くと「ユートピアみたいなもん?」と言ったら「ユートピア」とはちょっと違うんだと。なんて言うかな 「なんでも恵んでくれる。欲しいと思ったものを送ってくれる。そういう存在だと」言うんだよね。それは物だけじゃなくてね、心でも。そう言ったんで。

ウルトラマンの原型は沖縄から来たと僕はよく言う、しいて最近言うのは、それは金ちゃんの頭の中でウルトラマンっていうのは、使徒なんですよ。メッセンジャーなんです。

―「バルタン星人」について

ウルトラマンをスタートするときに色々事情があって、1本目がなかなかクランクインできない。脚本ができあがらん。そうすると僕は便利やですから、頭3本ね、経済的なこともあるし3本受け持ってくれと。
そうすると怪獣が同じじゃつまらない。ですから伝統的な円谷英二さんのゴジラから四つん這い怪獣がひとつ。それから宇宙人、これはケムール人が成功したので宇宙人もの。それからもうひとつは、もうちょっと工夫して植物怪獣というかたちでメロガンダという。ですから、そのうちのひとつがバルタン星人です。ですからベースはケムール人にありますよね。

バルタン星というのは地球よりはるかに文明の発達した星。そこからやってくる恐ろしい相手というふうにした。
ところが1本目撮ってからそうなったんですけど、急に撮り終わってすぐに「あれ評判いいから続編つくって」て。一話目の最後でウルトラマンがこうやって爆破しちゃったものをね、どうやって再生するか?っていうんで、
また考えたのは宇宙忍者というね。それは続編のほうのバルタン星人。
それが色んな特撮の要素を孫悟空の要素とか、色々僕がそこまでマスターした技術を詰め込んでやったもんですからね。ですから金ちゃんも僕との合作ですよね、厳密に言うと。

―人として 仲間としての魅力は?

仕事仲間としてはライバル意識とか、それから面子とか色々考えるんですけど、そういう意識を全然持たなくて
付き合える相手だったの。こちらの欠点も十分、金ちゃんのほうでわきまえてるし、こちらもそういうことで金ちゃんの欠点わきまえてるから、お互いに隠し事なくて合作が楽でしたね。

一番の魅力はね、円谷プロの文芸室長というかたちだったでしょ? あれは脚本を発注する人の極意ですけど、金ちゃんは準備稿をこちらが書き上げて渡すとね、読み終わるでしょ、「面白いですね!」と言うんですよ。そう言われるとね、書き手はね、それから後どんなに注文出されてもね、応じちゃうんですよ。
「面白いですね」って、あの目を輝かしていつも言うんですよ。だから、このまますんなりかなと思うと結構意外に注文が出るのよ。いろんな事情を背負ってますから。これは怪獣が3つ出てくるけど、円谷プロの支配人は2つにしてくれと、予算的に。だから、そういうのを全部背負っているんですよ、重い部分を。
でもそれをまず「面白いですね」と言われちゃうと。あれは、やっぱり金城哲夫のほんとに魅力的な部分だし、武器でしたよ。
金ちゃんの悪口言う人あんまりいない。仕事仲間で彼の悪口を言う人はあんまりいないですよね。